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ピッチパーフェクト:Bベンダーの歴史
即座にギターのピッチを変えるユニークなデバイスの秘密を紹介します。
"Bベンダー"と呼ばれる機構を搭載したTelecaster®モデルを今も提供しているか、という質問が時折フェンダーへ寄せられます。答えは「NO」で、現在はリリースしておりません。Bベンダー搭載のTelecaster®は、2000年代に生産中止になっています。
このミステリアスなデバイスはいったいどのようなもので、何ができるのでしょうか?
デバイスの名前は"Bベンダー"。ほかの呼び名もありますが、ほとんどのギタリストの間ではこの名前で通用しています。
Bベンダーは、Telecaster®のB弦(2弦)のピッチを全音(C#まで)上げる機械式のデバイスで、ペダルスチールギターのように、うねる泣きのベンドを表現します。ギターボディの中にスプリングを装着したレバーが組み込まれ、ブリッジとストラップボタンをつないでいます。レバーに直接つながったストラップボタンが、上下に2センチほど動く機構です。ギターを肩に吊るし、ネックを下方向へ押し下げることで、ストラップがストラップボタンを上へ持ち上げる形となり、レバーシステムが作動し、B弦のピッチを上げます。
Bベンダーは、ギタリストのクラレンス・ホワイトとマルチプレイヤーのジーン・パーソンズ という、2人のカントリーロックのパイオニアによって発明されました。2人は1960年代から1970年代初頭にかけて、Nashville WestやThe Byrdsをはじめさまざまなプロジェクトで活躍しました。彼らの発明したデバイスは、パーソンズ・ホワイト・プルストリングと呼ばれ、ホワイトの使用していた1954年制Telecaster®にフィットするように作られています。ホワイトは1973年、飲酒運転の車にはねられて死亡してしまいましたが、ベンダーメカニズムのプロトタイプを組み込んだ彼のギターは、現在マーティ・スチュアートが所有し、今でもたびたびプレイしています。
1970年代初頭に別のメーカーへライセンスを与えた後、パーソンズは同機構を『ストリングベンダー(StringBender)』と改名し、1973年から自分自身で製作・組み込みを始めました。彼は長年に渡り数百台のユニットを製作し、その後1989年にカリフォルニアのフォークミュージシャン、メリディアン・グリーンと提携し、生産量を増加しています。パーソンズとグリーンは最終的に、フェンダーカスタムショップへアプローチし、1995年、改良型のパーソンズ・ホワイト・Bベンダーを組み込んだ著名なClarence White Telecaster®モデルが生まれました。その後2002年までに、同機構を組み込んだ約200のギターが製作されています。
またフェンダーは、カスタムショップから1995年にBベンダーを組み込んだWhiteモデルがリリースされて間もなく、大量生産モデルを製作することも発表しました。パーソンズとグリーンは大量生産向けに再びBベンダーへ改良を加え、そのギターは、1996年にAmerican Standard B-Bender Telecaster®として世に出されました。さらに1998年には、3ピックアップモデルもリリースされています。
フェンダーは2000年に、前出のB-Bender Telecaster®の別バージョンもリリースしました。しかし残念ながら現在は生産されていません。同モデルには『カスタム・フェンダー・パーソンズ・グリーン・Bベンダー・システム(Custom Fender/Parsons/Green B-Bender System)』が採用されています。同システムは、ピッチ変更なし、半音上げ(C)、全音上げ(C#)の調節が可能です。
Bベンダーにまつわる話にピンとこなくても、Bベンダーは以前どこかで耳にしたことがあるはずです。クラレンス・ホワイトによる素晴らしいBベンダーのプレイがフィーチャーされたThe Byrdsのライヴアルバム『Live at the Fillmore: February 1969』は持っていないかもしれませんが、BベンダーをフィーチャーしたLed Zeppelinの『オール・マイ・ラヴ(All My Love)』や、The Eaglesの『ピースフル・イージー・フィーリング(Peaceful Easy Feeling)』は聴いたことがあるでしょう。Bベンダーを上手く採り入れたギタリストには、ジェイムス・ヘッドフィールド(Metallica)、ピート・タウンゼント、アルバート・リー、リッチ・ロビンソン(Black Crowes)、マイク・キャンベル(Tom Petty & The Heartbreakers)、ピーター・バック(R.E.M.)、デヴィット・ギルモアなどがいます。