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Dragon Slayer: ジミー・ペイジのテレキャスターの魔法
1959年製のテレキャスターがどの様にThe Yardbirdsでの最後の1年、Led Zeppelinのデビュー、そしてロック史上もっとも象徴的なギターソロの一つに関与したのでしょうか。
ジミー・ペイジはドラゴンを隠していた訳ではありません。
当時彼は、白黒の派手なドラゴン柄のスーツを着ていることでよく知られていました。彼がLed Zeppelin IVで自分自身を表現する為に使用した有名な"ZOSO"シンボルは、1972年に出版された"Grimoires et Rituels Magiques"の中の"Dragon Rouge – The Secrets of the Scientist Artephius."という章に由来しています。
しかし最も興味深いのは、あの"Dragon Telecaster"についての物語ではないでしょうか。
1959年製Telecasterの塗装が剥がれたアッシュボデイに、緑、オレンジ、黄色、赤や青のカラフルな色で、日本的で且つサイケデリックなドラゴン模様が描かれているのをご存知な方も多いでしょう。
炎の様な赤い角と、緑色の頭がTelecaster上部の角の部分に描かれており、ドラゴンの首部分から、コントロールパネル付近の割れた卵、また、蛇の様な尻尾部分まで緑を基調としながら、カラフルに彩られています。
しかし、この"Dragon Telecaster"には、象徴的なドラゴン模様以外にもストーリーがあります。
このTelecasterを最初に手にしたのは、ジェフ・ベックの友人であり、Deltonesで一緒にバンドをやっていたジョン・オーウェンでした。彼は1961年に、このギターを107ポンドで購入したそうです。正確な製造年月日は分かっていませんが、当初このTelecasterはブロンドカラーで、1959年と60年製のTelecasterに見られる、メイプルネック、スラブローズ指板、トップローディングのブリッジを特徴としていました。(スラブローズ指板は、最初にJazzmasterに採用され、翌年の1959年にTelecasterにも採用されました。)
Deltonesでリードギタリストだったジェフ・ベックは、当時使用していたBurns社製の"Tri-Sonic"では、ギターソロがプレイし辛いと感じ、ジョン・オーウェンにギターを交換する様に頼みました。ジョンは、暫くの間ギターを交換することに同意しましたが、とはいえ"Tri-Sonic"のコントロールに難しさを感じた彼は、直ぐにTelecasterを返して欲しがったと"Hot Wired Guitar: The Life of Jeff Beck"の中でマーティン・パワーは記しています。
その後、Deltones解散後にどうやってジェフ・ベックがこのギターを再び手にしたのかは不明ですが、彼は1965年と66年のThe Yardbirdsでの活動期間中、メインの1954年製のスワンプアッシュのEsquireのバックアップとして使用していました。
"オリジナルの白いピックガードとスイッチノブの代わりに、ジェフ・ベックが黒いピックガードに付け替えた"と"Led Zeppelin Gear: All the Gear From Led Zeppelin"でジェフ・ストローマンは記しています。
1966年、ジェフ・ベックはこのギターを当時キャリアを始めたばかりのジミー・ペイジにプレゼントしました。また、ジミー・ペイジがジェフ・ベックをプロデューサーに推薦したり、ジェフベックが、エリック・クラプトンが去ったあとのThe Yardbirdsにジミー・ペイジ加入させたりと2人の交流はありました。もともとエリック・クラプトンもジミー・ペイジを推薦していましたが、当時の彼は、すでにスタジオミュージシャンとして成功していました。
ジミー・ペイジがTelecasterを受け取った時には、すでに塗装は剥がれており、1967年2月に8つの丸いミラーが取り付けられるまで、そのまま使用されました。(Pink Floydのシド・バレットが所有していた、15個のミラーが取り付けられたEsquier - 1967年1月に発表されたレコーディングセッション映像"Let’s All Make Love"で使用- に影響を受けた可能性もあります。)
ジミー・ペイジは、ミラーを取り付けたTelecasterをほんの少しの間だけプレイしました。1967年半ばにはそのルックスが気に入らなくなり、ミラーをはずし、自分で再塗装することにしました。そして彼は、黒いピックガードを透明なアクリル製のものに交換し、光の反射が美しいフィルムを挟み込みました。
「自分で製作したので、それは他とは違う特別なTelecasterになりました」ジミー・ペイジは2014年のインタビューで語っています。「とても神秘的なものを感じた、まるで魔法が掛かったギターの様でした」
1968年に彼がLed Zeppelinを始めた1968年から1969年までの間、"Dragon Telecaster"はスタジオやステージ上で使用されるようになりました。ブラッド・トリンスキーによる"Light&Shade:Conversations With Jimmy Page"の中で、Dragon Telecasterは、Led Zeppelinに置いてメインで使用されたギターで、後に「Stairway to Heaven」の象徴的なギターソロを録音するのに使われました。"と記されています。
1969年初頭、"Dragon Telecaster"のピックアップの1つに問題を抱えたジミー・ペイジは、同年4月にLes Paulを購入し、メインギターとして使用するようになりましたが、1970年に「Stairway to Heaven」のソロを録音する際に使用したそうです。
しかし、"Dragon Telecaster"は、その後、彼がアメリカツアーに出ている時に台無しにされてしまいました。
「まだそれを持っていますよ」1988年のGuitar Worldのインタビューでジミー・ペイジは語っています。「とても悲劇的な話なんです。ジョー・ウォルシュから買った59年製のLes Paulを持ってツアーに出て、帰って来た時に、私の友人が"プレゼントがある"と私が描いたペイントの上にさらに絵を描いていたんです。彼は私が気に入ると思ってやったようでしたが、あなたが考える通り、私は本当にそれが気に入りませんでした。彼が塗装したことで、サウンドと配線が完全に台無しになり、辛うじてフロントピックアップだけが機能する状態でした」「私はそのギターからネックだけを救済して、ブラウンカラーのストリングベンダーのついたTelecasterに移植し、The Firmで使用しました。残念ながらボディは2度と見ることができないでしょうね」
熱狂的なジミー・ペイジ、そしてこの"Dragon Telecaster"のファンの方に素晴らしいニュースがあります。ついに、ジミー・ペイジの伝説的なキャリアとLed Zeppelinの50周年を記念して4つのモデルが製作されます。2つはFender Custom Shopから"Limited Edition Jimmy Page Telecaster Set"として、そして残りの2つはFenderからリリースされる予定です。
「ジェフ・オーウェンから始まったこのギターが、Led Zeppelinのファーストアルバムを通って... フェンダーがこのギターの歴史を再現していく過程を見ることは、とても興味深い体験でした」「オリジナルを再現したいと考えています。でもきっとオリジナルより旅をするギターになるのでしょうね」