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TAXMAN インタビュー「テレキャスターは自分を成長させてくれる」
THE BAWDIESのギター/ヴォーカルとして愛器のテレキャスターを弾く TAXMAN。その姿は「TAXMAN=テレキャスター」とファンの間でイメージが定着しているといってもいい。2013年に発売されたシグネイチャーモデル「TAXMAN TELECASTER®」、そして今もメイ ンで使用する「‘52 TELECASTER® with HUMBUCKER」とともに話を聞いた。
時にはフェンダーのスタッフと酒を飲みながら機材の話を交わすくらい、TAXMANはギターという楽器が大好きだ。THE BAWDIESのステーシを観ている人なら分かると思うが、ステージ上で本当に楽しそうにテレキャスターを弾く。そんな彼が使うのは「見た瞬間に一目惚れした」というカスタムショップ製のテレキャスターだ。ロックンロール・バンドらしく「男らしくかき鳴らせるギターであること」をポイントに挙げ、2013年にシグネイチャーモデルを発表。テレキャスターとロックンロールを愛するTAXMANが認めたスペックが凝縮され、その切れ味抜群でザラついたサウンドとともに多くのギタリストを魅了した。そして、TAXMANのテレキャスターへの愛情も年々深まっている様子なのだ。
― テレキャスターはフェンダーの歴史における一番最初のギターなんですよ。
TAXMAN その形が今も変わらずに続いているって、よくよく考えると凄いことですよね。
― はい。
TAXMAN テレキャスターはハマりやすい楽器なんです。もし僕がストラトキャスターを使っていたら、フェンダーと一緒に何かをすることもなかったかもしれない。僕はあまり器用なギタリストじゃないんで、不器用な自分にテレキャスターは丁度いいんです。多分ストラトだったら自分らしさを出せなかったと思うし、フェンダーの人にも見てもらえなかったんじゃないかなって思います。
― ここ4〜5年くらい、TAXMANさんはカスタムショップ製のテレキャスターを愛用してくれていますが、多分キャリアの中で一番長く使っているギターだと思うんです。ギターを探しにフェンダーを訪ねてきてくれたのが、最初の出会いだったんですよね。
TAXMAN 当時は新しいメインのギターを探していて、最初からテレキャスターにしようと決めてました。で、フェンダーのショールームに相談しに行ったら、何本かおすすめのギターを紹介されて、そのなかの一本が今使ってるカスタムショップのギターだったんです。見せてもらった瞬間、「絶対にこれだ!」と。まず見た目がドンピシャでした。
未だにヴィンテージの機材はすごく好きなんですけど、やっぱりライブでガンガン使うっていう意味だと、カスタムショップのギターが最高ですね。めちゃめちゃタフだし、現代のギターならではのメリットがたくさんある。テレキャスターのヴィンテージって、僕らみたいに爆音で演奏していると、すぐハウるんです。そうならないようにピックアップの裏にロウ付けしたりとか、ヴィンテージは細かい調整が必要で。だったら、細かいことを気にしないで弾けるギターがいいなと思って。
新しいギターって使えば使うほど、音がどんどん変わってくる。大げさかもしれないけど、自分と一緒に成長していってる感覚があって、すごく魅力的だし愛着も湧く。ゆくゆくは、極論を言ったら僕がこれを 30年ぐらい使ったらヴィンテージになるじゃないですか。そういう意味でも、本当にベストな一本だと思います。
― サウンド的にはどうですか?
TAXMAN 鳴らした瞬間にドーン!ってくる感じが気持ちいいです。もともと僕はフロント・ピックアップがハムバッカーなのがすごく好きで、特にライブではセンターでミックスした音を出す時とか使いやすいんです。このテレキャスターは最初からフロントがハムだったので、それも決め手の一つになりましたね。
― 演奏中にスイッチを切り替えたりする方ですか?
TAXMAN はい。ただ、テレキャスターのスイッチって、ライブの演奏中だと切り替えにくいんですよね(笑)。でも、それも愛嬌だと思ってるので。アンプとの相性も大切ですし、テレキャスターはセッティングがとても重要なんですよ。簡単にいい音を出せちゃうと自分も成長しな いですし、そういう意味でもこのギターは奥が深いし魅力的です。最近はアンプを通さずに弾いた時、しっかり鳴るようになってきたなと感しることがあります。弾きこんでいくと、ボディとネックが少しずつリンクしていく感覚があるんですよ。なぜそういう風に感じるのかは分からないんですけど。
― その後、シグネイチャーモデルを作ることになった時も話は早かったですよね。このテレキャスターそのものがTAXMANのアイコンになっていてカッコいいから、特に変えたりはせず、そのまま出そうよという話をしましたよね。
TAXMAN そうですね。
― 元のモデルとシグネイチャーとでは価格帯が3倍くらい違いますが、ピックアップとかサウンドに影響のある金属パーツとか、カスタムショッ プと同じものを共有していて。
TAXMAN 「シグネイチャーなので何でもできますよ」って言われたんですけど、このままで十分だなと思ったんです。僕が使っているカスタムショップ製テレキャスターの魅力をそのまま伝えたかった。僕が初めてこのギターを見た時と同じような気持ちを感じてもらいたくて、「何も 変えずに、そのままでお願いします」と頼みました。あとシグネイチャーだから自分のサインをどこかに入れなきゃいけないんですけど、あまり前面に出したくなかったので、ヘッドの裏に控えめに入れました。サインとか正直消えても構わないので、好きなように弾いてもらいたいですし、ガンガン弾いてボロボロになるくらい使い込んでほしいなぁと。
― 実際に購入してくれた方の声を聞くのも嬉しいんじゃないですか。
TAXMAN TAXMANさんのテレキャス買いましたとか、TAXMANさんが薦めてくれたレコード買いましたとか、自分をきっかけに楽器や 音楽に興味を持ってくれるのって、すごく嬉しいです。バンドをやっていて良かったですし、BAWDIESの活動の目的もそういうことなので。「今 だけじゃなく、昔にもいい音楽があるんだ!」っていうことを知って欲しかったし、BAWDIESっていうバンドを「好き」で終わるんじゃなく、そのルーツまでさかのぼって欲しかったから。だから、そうやってファンの方から言われたりすると、本当に一つの夢が達成できてるなと実感します。
― ファンの間でもTAXMANといえばテレキャスターって完全に定着しましたよね。
TAXMAN でも実は、これと双璧をなす新たなテレキャスターが欲しいなって少し思ってるんです。バンドってどんどん進化するじゃないですか。ずっとロックンロールをやるんだったら今のギターだけで十分ですけど、いろんな意味で幅も広がってきてるので。もちろん、このギター1本で幅の広さに対応していくのも楽しいですよ。ただ、同じテレキャスターで別のバリエーションがあってもいいかもしれないなと。
ライブの現場には、メインで使うカスタムショップのギターの他に、サブとしてシグネイチャーを持って行ってるんです。例えば、ライブ中に弦が切れた時はシグネイチャーを一時的に弾いて、弦が張り替え終わったらメインに戻す......みたいな使い方をしていて。そうではなく、この曲はテレキャスターA、次の曲はテレキャスターBっていうように、2本のメイン機を使い分けてみたいです。
ワンマンとか長い時間のライブの時は、メインとサブ以外にヴィンテージのギターを持って行ったりするんですけど、いきなりヴィンテージを使うとセッティングも大幅に変えなくてはいけないし、ハマりがあまり良くなかったりする。だから今のテレキャスターとは別に新しい武器が、もう一本欲しいんです。
― 11月にリリースしたシングル「THE EDGE」のカップリングには、TAXMANさん作曲の「LOSER」が収録されてます。ギターのカッティングも特徴的で、シングル曲とはカラーが全然違うなと思いました。
TAXMAN 自分が曲を作る時はギターリフから思いつくことが多いんです。うちのバンドはヴォーカルがベースを弾くから、ベースでコードを鳴らしてメロディを歌う。で、それに合わせてイントロのリフやドラムのパターンを決めていくので、自分の曲とは作り方が逆なんです。僕の場合、家でギターを弾いていて、「カッコいいのができた! これに合うドラムはこういうのがいいな......」とか、リフから発信していく。だから「LOSER」みたいな曲が出来るんだろうなと思います。でもギタリストは、そういう人って多い気がするんですよね。何気なく弾いていて見つかったリフから作るっていう。
― ヴォーカルも良かったです。
TAXMAN 歌のことを言われると恥ずかしい(笑)。ただ、歌うのは好きなんですけど、歌の練習はぜんぜんやりたくないんですよ。しっかり準備しなくちゃいけないのは分かっているのに、練習となると途端につまらなくなる。レコーディングの前に、スタジオにオケを流して歌の練習をするんですけど、面白くなくて休憩ばかりしてますね(笑)。曲を作るのも好きだし、歌うのも好きだから最終的にはやるのに、練習は嫌い。恥ずかしいんですけど、本当のことなので。だから、いい曲やいいメロディが浮かんでも、「この曲自分で歌いたくないなぁ」って思うとヴォーカルに投げてみて、そのまま曲になったり......っていうのも結構あります。
― BAWDIES のライブでもTAXMANさんの曲って、ちょっとしたアクセントになっているなと思います。
TAXMAN 自分で言うのもなんですけど、それはすごくいいなぁと思ってます。昔のバンドだと、いろんな人が歌うじゃないですか。ビートルズだったら、ジョンとポールっていう凄い人たちがいるのに加えて、他のメンバー2人も歌う。ストーンズでもキースが時々歌いますよね。 めちゃくちゃ歌が上手いわけじゃないけど、キースが歌うと「おお!」ってなる。その感じが、すごくいいんです。ソロだったらできないし、それがロックンロール・バンドの魅力でもあるし、BAWDIES の長所の一つなのかなと自分でも思います。
― 2017年は久しぶりの全国ツアーがあります。そういえば、以前のツアーでは「旅テレ」と題して、各地でテレキャスの写真を撮ってSNSに投稿してましたよね
TAXMAN そうなんですよ。テレキャスターとツアー先の風景の写真を撮るっていう謎な企画を一人でやっていて、城の前でギター持ってウ ロウロして「よし、ここにしよう」みたいな(笑)。
― ちゃんとシリーズ化していて。
TAXMAN 人形を旅させる人とかいるじゃないですか。その様子を写真に撮って公開するみたいな。テレビで知ってこれだ!と。で、テレキャ スターを旅させてみようと思って実践してみたはいいけど、人形より重いし大変だった(笑)。
― 確かに(笑)
TAXMAN ギタースタンドが無い状態で撮るから、結構難しいんですよ。
― では「旅テレ」第二弾も期待しつつ、またツアーに向けて音づくり等でご一緒できればと思います!
TAXMAN はい。また来ます!
TAXMAN TELECASTER®
THE BAWDIES のギタリストTAXMANのシグネイチャーモデル。彼が愛用するカスタムショップ製‘52 TELECASTER® with HUMBUCKERをベースに、フロントにはセイモアダンカン社の‘59 HB、リアにはカスタムショップ製のノーキャスターピックアップが搭載されている。またメイプル 1ピースのネックは握り心地を重視したソフトVシェイプで、フレットにはダンロップ製6105ナロージャンボを採用。ボディとネックともにラッカーフィニッシュが施され、さらにキズやくすみを再現したロードウォーンフィニッシュがヴィンテージ感を演出している。カスタムショップでも定評のある、こだわりの仕様が実現した。
TAXMAN
THE BAWDIES のギター/ヴォーカル。高校の同級生だった ROY(ヴォーカル/ベース)、JIM(ギター/コーラス)、MARCY(ドラム/コーラス) とともに2004年1月1日にバンド結成。メンバー全員が敬愛するリトル・リチャードやレイ・チャールズに代表される リズム&ブルース/ロックンロールのルーツを昇華した楽曲、その強力なライブパフォーマンスが注目を集め、2009年にメジャーデビュー。2013年、フェンダーとTAXMANがエンドースメント契約を結び、シグネイチャーモデル「TAXMAN TELECASTER®」を発表する。2017年で結成 13年目を迎えるTHE BAWDIES、2月8日には約2年ぶり6枚目のアルバム『NEW』をリリースし、同月19日からは計33公演におよぶ全国ツアー「NEW BEAT TOUR 2017 」をスタートさせる。
› THE BAWDIES:https://thebawdies.com/