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何故ギターケーブルはスピーカーケーブルに代用できないのか
ギターケーブルをスピーカーケーブルに代用できないことを知っている人も多いと思いますが、その理由を知っている人は少ないでしょう。大体は「やってはいけません」と言っておけば十分かもしれませんが、理由を理解しているのとしていないのでは、大きく違います。
ギターケーブルとスピーカーケーブルは全く異なる2つの目的によって製造されています。これらを代用することは楽器の故障の原因となり、不快なノイズを生み出してしまう恐れがあります。
これらのケーブルはどちらも同じ1/4フォンプラグを使用しているため、初心者の人や、焦っていたりする時は,、間違えてしまうこともあるでしょう。しかし、これは唯一の重要な類似点でもあります。よなぜ代用してはいけないのかを両者のケーブルの詳細を見て、それぞれの目的と違いを検証していきましょう。
楽器用ケーブルは低出力でハイインピーダンス設計になっています。これは、楽器から出る微弱な信号をアンプに伝達するための設計です。小さな電圧に小さな電流なので、高出力である必要がないのです。アースの役割も果たしている編組シールド導体や、様々な絶縁体とシールド被膜の内部を小径の「ポジティブ」インナーワイヤーが通っている構造になっています。小さくて軽いワイヤーは、ケーブルの柔軟性にはとても良く(ステージ上でも常に楽器に接続していなくてはならないことを思い出してください)、シールド被膜は外部機器からの干渉も防いでくれます。
一方、スピーカーケーブルの場合は、高出力のローインピーダンス設計と全く逆です。アンプからの高電圧、高電流の強い信号をスピーカーへ伝達しなければならないからです。アンプからスピーカーへ強い信号を伝達するための太い2本の導線が使用されています。
水がパイプを通るのをイメージするとわかりやすいでしょう。アンプは水を押し出す役目を果たし、スピーカーケーブルはその水をスピーカーへと送り出します。もしそのパイプが小さいと送り出す水の量も減ってしまいます。スピーカーの導線も同じ働きで、径の小さいものだと抵抗が強くなって無駄なエネルギーを消費し、発熱してしまいます。ワイヤーが大きいほど、アンプからスピーカーへの信号の流れは良くなります。
楽器用ケーブルをスピーカーケーブルとして使用してしまうと、低い信号のレベルでは問題はないでしょう。高い信号レベルだとトラブルが起きてしまいます。アンプの全電力が楽器用ケーブルの、通るには小さすぎる導線を流れてしまうのです。結果的に高いアンプの電力は熱に変化してしまい、スピーカーまで正しく伝達されません。出力が足りなかったり、音が歪んでしまったりしてしまいます。最悪の場合、熱によるケーブルまたはケーブルコネクタの故障へとつながります。
スピーカーケーブルを楽器用ケーブルとして使用した場合、太い導線を弱い信号が通ることは問題ありませんがケーブルがシールドされていなことで問題が起こります。スピーカーケーブルは増幅された強い信号を送り、ノイズはさほど問題ではないためシールドが必要ありません。そのため楽器用ケーブルとして使用すると他の電子機器の電源に干渉する恐れがあるのです。
ピックアップで拾われた弱い信号をアンプへ伝達するには必ずシールドされた導線を通る必要がありますが、スピーカーケーブルを使用した場合はそうではありません。結果的に聞こえてくる低周波のノイズや微弱な音は、シールドされていないケーブル、ギターの配線、アンプの配線から漏れて出た60サイクルの周波数(アメリカ規格)によるものなのです。そしてアンプはそれを増幅してしまい、まるで怪物が唸っているかのような音にしてしまうのです。