#FenderNews / King Gnu【後編】
Cover Artist | King Gnu【後編】
(Photograph by Maciej Kucia / Hair Make by TAKAI)
19年1月にメジャーデビューアルバム「Sympa」をリリースしたKing Gnu。実験的かつアヴァンギャルドなサウンドプロダクションと、J-POPばりの訴求力を持つメロディによって、コアな音楽ファンからお茶の間までファンベースを着実に広げ続けている。そんなKing Gnuから、ヴォーカル&ギターの常田大希とベースの新井和輝がFenderNewsに登場。
― お2人にとってフェンダーとの出会いというと?
新井 実際にフェンダーのベースを持ち始めたのは21歳の頃ですね。さっきも言ったように、当時の僕はゴスペルが大好きで。本場のゴスペルベーシストの動画をインターネットで掘りまくっていたんですけど、そうするとほとんどのベーシストがアメデラ(フェンダーのAmerican Deluxeシリーズ)のJazz Bassを使っているんですよ。デリック・ホッジもその1人で、“やっぱりアメデラいいよなぁ”と思ってネットの楽器サイトで検索してみたところ“残り1本”となっていたので、次の日には試奏してその場で購入しました。
常田 フェンダーとの出会いは、確かJaguarのサンバーストだったと思います。当時はニルヴァーナやソニック・ユースなどオルタナティヴロックが好きで、カート・コバーンやサーストン・ムーアに憧れて…という部分はありましたね。オークションか何かで安く手に入れたJaguarを、わざとボロボロにして使っていました(笑)。おそらく、今も実家にあると思います。
― 常田さんが今日お持ちのギターは、American Performer Mustang®をフェンダーとともにカスタマイズしたそうですね。
常田 Mustangは黄色のヴィンテージを持っていたことがあって。サイズが小ぶりでかわいくて使っていたんですけど、ボディの丸っこい部分を削ってシャープなシルエットにしたかったんですよね。それで今回、フェンダーさんにカスタマイズをお願いしたんです。Mustangってどうしてもピッチが安定しにくいので、アームの稼働範囲を狭くするなど試行錯誤を繰り返しました。ピックアップも、ずっと愛用しているP90を搭載してもらったところ、音が太くなったし歪みのノリも良くなりましたね。ネックはメイプル素材に交換しました。メイプルは使い込むほどに味が出るんですよ。
― 色(ペニー)も渋くてカッコいいですね。
常田 そうなんですよ。フェンダーが新たに出したカラーらしくて。今っぽくないヴィンテージさが気に入ったので、そのまま使っています。ピックガードも自分でカットして、全く新しいデザインに生まれ変わったようでとても気に入っています。ちなみに「飛行艇」という曲で弾いているのは、このMustangです。
― 新井さんは今日初めてAmerican Ultra Jazz Bass® Vを試奏してみたそうですね。
新井 はい。これまで僕はアメデラと、その別ラインであり後継モデルのような位置付けのAmerican Eliteシリーズをよく使っているんですけど、Ultraはさらにそのニューラインという感じですかね。マイナーチェンジではあるのですが、いい部分はしっかり残しつつ進化しているなと思いました。
― 楽器を持ち替えることによって、プレイスタイルが変わるということもありますか?
新井 ありますね。例えばベースの場合は5弦ベースが生まれたことで、エレキベースで使える音域が格段に増えた。メーカーによって違いますけど、6弦ベースが開発されて、それを使用しているサンダーキャット(ステファン・ブルーナー)がベースによるコード弾きをしたことによって、今までになかったサウンドが生まれました。ドラムとベースだけでも楽曲として成立しやすくなったというか。そうやって楽器や機材が進歩することにより、音楽そのものが進化していった例はたくさんあると思います。
― 常田さんはライヴのアコスーティックパートで American Acoustasonic™ Telecaster®も使用しているそうですね。
常田 そうなんです。例えばライヴでアコギをマイキングするのは、けっこう面倒なことが多いんですけど、 American Acoustasonic™ Telecaster®ならシールドをつなげば簡単に音が出せるので、作曲時などの日常使いで特に重宝しています。音はアコギとも違うしエレキとももちろん違っていて、これはこれで気に入っていますね。歪み系のエフェクターも独特のかかり方がするので、いろいろトライしてみる価値のある楽器だなと思っています。
新井 American Acoustasonic™ Telecaster®は、家に1本あったら良さそうな気がするね。
常田 そう。エレキの音もアコギの音も出せるから、制作している時にぱっと切り替えられるしギターはこれ1本あれば成立する。
新井 そうそう。そういう意味では、音楽制作をやっている人、これからやってみたい人にもぜひオススメしたい楽器です。
― お2人がベースやギターに求めるのはどんなことですか?
新井 ベースに求めるのは、ローの“量感”というか“色気”というか…。波形で見た時に、単に低い帯域が出ているからいいという意味のローではなく、“ツヤ”みたいなものがしっかりと出ているかどうかは、大前提としてチェックしますね。King Gnu自体、上の帯域が多かったりするので、そういうリッチな低音というのは当然必要になってくるんです。
常田 ギターに関して言うと、キレイな音を出す必然性は俺自身あまり感じていなくて。すべての帯域がバランスよく出る音というよりは、荒くて歪みのノリがいい音が出るほうが好きなんですよね。Mustangはそういう意味では、荒々しい音でかき鳴らしたくなるギターだなと(笑)。
― では最後に、これから音楽を始めたいと思っている人にメッセージをお願いします。
新井 もし、これから楽器を始めるなら、“初心者セット”みたいな安価なものを買うのではなく、最初からいい楽器を購入したほうがいいと思いますね。いや僕も“初心者セット”を買いましたけど(笑)、もしあの時にJazz Bassを買っていたら、きっと今でも使えたと思うんです。そのほうがきっと弾いていても楽しいし、時間とともにより愛着が湧いてくると思うんですよ。無理のない範囲で、なるべくいい楽器を手に入れる。それが上達のコツだと思いますね。
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PROFILE
King Gnu
東京藝術大学出身で、独自の活動を展開するクリエイターの常田大希が2015年にSrv.Vinciという名前で活動を開始。その後、メンバーチェンジを経て、常田大希(Gt,Vo)、勢喜遊(Dr,Sampler)、新井和輝(Ba)、井口理(Vo,Kb)の4名体制で始動。2017年4月、バンド名を“King Gnu”に改名。2019年、2ndアルバム「Sympa」でメジャーデビュー。
RELEASE INFORMATION
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