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ギターでしか伝えられない パッションと温もりがある |MIYAVI【後編】

MIYAVI

国内外のアーティストとライヴ、セッションを行っている世界的ギタリストのMIYAVI。そんな彼が対戦型コラボレーションアルバム「SAMURAI SESSIONS vol.3 - Worlds Collide -」をリリース。前作よりも明らかな深化を遂げた本作について、そしてギターへの想いを聞いたインタビュー。後編では、ニューアルバムで使用したフェンダーのTelecasterについて、そしてギターへの想いを語ってもらった。

今の時代のギタリストは デジタルの楽器と対峙しないといけない。 だからいかに近くで鳴るかが大事
 

― 前編ではニューアルバム「SAMURAI SESSIONS vol.3 - Worlds Collide -」について伺いましたが、そのレコーディングは今日持ってきてくださった愛用のテレキャスで?

MIYAVI そうですね。このサイボーグギター1本ですべてレコーディングしました。

― どんな改造が施されているのか改めて教えてください。

MIYAVI サステイナーを内蔵しているのと、外付けとしてはアームです。あとはリアピックアックがハムバッカーになっています。

― 確かにもはやテレキャスじゃない感じですね(笑)。

MIYAVI はい。もはや、ストラトに近いです。だけど、アティチュードはテレキャスなんです。“笑った時、ずっと歯茎が見えてる感”というか。ストラトは笑った時、“ふふふ”というか、セクシーなんですけど、テレキャスはどちらかというと無骨。ガー!と笑っている感じというか。その躍動感、爆発力、キレはやっぱりテレキャスだと思います。

― そもそもなぜテレキャスを?

MIYAVI もともと、ずっとエレキとアコギの融合をやろうとしていて色々試してたんだけど、ロバート・ランドルフとナッシュビルでジャムった時、彼のアンプ直の何もかましていない出音が強烈で。自分もまた新しい音を探したいと思いはじめたんです。ナッシュビルの街中、いろんな楽器屋で試奏して、改めてテレキャスと出会いました。

― なるほど。

MIYAVI そこから先が、僕とフェンダーとの出会いにもなるんですけど、ロサンゼルスに戻り、地元の知り合いのカスタムショップが“ぜひMIYAVIのためにカスタムで作りたい”って言ってくれて、テレキャス風のギターをカスタムで作ってもらって、しばらくの間それを使っていました。それは、アームも付いてないしサステイナーも付いていないものでした。で、ローリングストーン誌など、音楽雑誌やギター誌の表紙をそのギターで飾らせてもらったんです。その後、それを見たフェンダーの社長から“これはフェンダーじゃない!”って電話がかかってきて、“一度話をしないか?”ということになったんです。

― そうでしたね。

MIYAVI で、フェンダーに来た早々、まず、“MIYAVI君、君はテレキャスターっぽいギターを使っているね...”っていうところから始まって(笑)こっちはこっちで、“はい、まあ、別に、音が良ければメーカーは何でもいいんだよね”みたいな(笑)ぶっちゃけ、自分自身、ギターのメーカーとかモデルとか、王道のギターというものをずっと避けていたんですよね。伝統的な音よりも、新しい音を出したかった。そうしたら、“まず、1回フェンダーのギターをちゃんと弾いてみないか?”と言われて、何本か飾ってあるギターの中から選んで弾いてみたら、本当に音が良かった(笑)そこで選んだのがこのテレキャスでした。それからフェンダーを使い始めたんですが、ちょうど映画「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」のテーマを手掛けたあたりですね。

― 選んだのは普通のテレキャスだったんですよね。

MIYAVI そうですね。そこにまずアームを付けたのが次の年くらいかな。左手だけでは表現しきれないベンディングっていうか、鍵盤と鍵盤の間の音みたいなところも表現したくて。最初はアームが付いているストラトも試したんですけど、やっぱりサウンド的にストラトよりテレキャスのほうが良くて。それでテレキャスにアームを付けてもらったんですけど、つけてくれたフェンダー技術者的にも、色んな意味で挑戦だったと思います。

― 挑戦ですね。

MIYAVI それからファズでロングトーンを弾くようになって、サステイナーを内蔵しました。今の時代、デジタルの楽器、ラインで作られた音と対峙しないといけない。だから、いかに近くで鳴るかが大事なんです。当初、アコギでスラップ奏法を弾いていたわけだけど、それをエレキで表現する時に、テレキャスに出会った。そこからファズトーンを得て、いかにメロディを弾き、かつDJや打ち込みの音と共存するか。そこで、サステイナーを付けてみようとボディの中に組み込みました。そうしたら、音が伸びる伸びる(笑)。ただ、今度、アームも使うので、ハイに上がった時にどうしても音が細くなるんです。そこで、ハムバッカーに出会った。リアピックアップをハムバッカーに替えたんです。リアこそがテレキャスの特色なので、これは一大決心でしたが、そうしたらファズとの相性も良くて。

― つまり、美味しいとこ取りですよね?

MIYAVI うん、カレー、ハンバーグ、焼肉乗せみたいな(笑)カロリー高いです。これ1本あれば何でもやれると思います。ぶっちゃけ、邪道だとも思う。けど、僕にとって、表現したい音を出すためには、これ以外に選択肢はないんですよね。そういう意味では、むしろ王道だと思っています。


ギターが消滅する日が来るかもしれない。 だからこそ、なぜギターを弾くのかを 大事にしないといけない
 

― それは、ライヴでギターを持ち替えないで1本ですべて実現することも視野に入れているからですか?

MIYAVI 基本的に僕は、服も住むところもギターも、すべて機動力を大事にしたい。ノマド(遊牧民)じゃないですけど、世界中、ギターを担いでいろんなところに行くし、常に身軽でいたいんですよね。いつでも戦える状態、というか、いつでも動ける状態でいたいんです。どこに移動するにもペダルボードとこの1本を持ち歩いています。でも、それが2本3本となると、どんどん自分の可動域が狭くなる。できるだけコンパクト、かつシンプルでいるように心がけています。

― MIYAVIさんに憧れてギターを始める人も増えてきていると思います。

MIYAVI そこに関してはプレイヤーだけではなく、メーカーも含め、みんなで頑張らないといけないと思いますね。今は、コンピューターだけで音が作れて、なんならギターも打ち込めちゃう時代でしょ。メールと手紙で例えるなら、メールでコミュニケートする便利さを認めた上で、手紙でしか伝わらないものや、手紙を送りたいって思う瞬間、気持ちをどう伝えるか。打ち込みと楽器で言えば、やはりコンピューターでは作れない、僕たちが楽器で奏でる音を聴きたい、とどう思ってもらえるのか。それが自分たちの責任でもあり役目だと思います。

― では、MIYAVIさんにとって手紙、つまりギターを弾くことでしか得られないものって何ですか?

MIYAVI やっぱりそこは人のパッション、と温もりです。熱量だと思います。今後、どうなっていくかは正直、僕もわからない。ギターが消滅する日も来るかもしれない。だからこそ『なぜギターを弾くのか?』をすごく大事にしないといけない気がしています。僕の場合は、ギターに救われたからギターを弾いている。そして、言葉ではリーチできないところまで、ギターだったらリーチできる。人の心を動かせる。言葉が伝わらない人たちにもリーチできる。難民キャンプに行ってギターを弾くだけで、子供たちがワー!ってなるんです。いくら歌っても、いくらスピーチをしても、彼ら彼女たちの心を動かすことはできないかもしれないけど、ギターを一発弾いただけで心が躍る。これはギターでしかできないこと。だから僕は大事にしたい。Eメールだと届かないことが、手紙だと涙を流す、感情を伝えられることができるかもしれないのと一緒です。ギターにしかできない、ギターでしか伝えられないパッションと温もりがある。だから僕はギターを弾きます。

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【MIYAVIの所有ギター】

MIYAVI

Fender Custom Shop Telecaster
大胆なカスタマイズが施された現在のメインギター。センターピックアップをマウントし、もはや彼の代名詞とも言えるサステイナーを搭載している。ブリッジは、テレキャスターサドルのままアーミングプレイを可能にするMaverickスーパービートレモロシステムへと変更。

PROFILE


MIYAVI
エレクトリックギターをピックを使わずにすべて指で弾くという独自の“スラップ奏法”でギタリストとして世界中から注目を集め、これまでに約30カ国300公演以上のライヴとともに、6度のワールドツアーを成功させている。2015年にグラミー受賞チーム“ドリュー&シャノン”をプロデューサーに迎え、全編ナッシュビルとL.A.でレコーディングされたアルバム「The Others」をリリース。また、アンジェリーナ・ジョリー監督映画「Unbroken」では俳優としてハリウッドデビューも果たした他、映画「Mission: Impossible -Rogue Nation」日本版テーマソングのアレンジ制作、SMAPへの楽曲提供をはじめさまざまなアーティスト作品へ参加するなど、国内外のアーティスト/クリエイターから高い評価を受けている。常に世界に向けて挑戦を続ける“サムライギタリスト”であり、ワールドワイドに活躍する今後もっとも期待のおける日本人アーティストの一人である。
› Website:http://myv382tokyo.com

New Album
SAMURAI SESSIONS vol.3 - Worlds Collide -
【初回限定盤(CD+DVD)】¥5,400(tax in)
【通常盤】¥3,240(tax in)
ユニバーサルJ
2018/12/05 Release