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音を言葉で表現するのは難しいけど、とにかくほかのストラトでは絶対に出ない音 | Char インタビュー【前編】

Char

フェンダーカスタムショップとCharのコラボレーションがまた動き出した。Charizma(Stratocaster)、Free SpiritsとPinkloud(Mustang)に続くシグネイチャーモデルの第3弾「CHAR 1959 STRATOCASTER® BURGUNDY, JOURNEYMAN RELIC」である。PINK CLOUD時代のCharを象徴する、あのバーガンディミストのストラトが2つのスタイルで復刻される。ひとつはCharが使い始めた当時の外見を想起させる“CUSTOM BUILT”、もうひとつは現在の外見を完全再現した“MASTERBUILT”。オリジナルバーガンディストラトの魅力、そして復刻の経緯についてCharに聞いた。


こいつにしかない音。いい意味で枯れてる
 

―  今回、フェンダーカスタムショップでCharさんのバーガンディミストのストラトをリイシューすることになりましたね。あのギターはPINK CLOUD時代に頻繁に使っていたギターですし、ファンにも印象深いものです。そもそもあれは加部正義さん(ルイズルイス加部)の紹介で入手したそうですね。

Char   そうそう、80年代の最初にマーちゃん経由でね。たぶんサンフランシスコから来たと思う。マーちゃんの友達で、70年代からいわゆるオールドを扱っていた人がいて、その人がたまに日本に帰ってくると必ず俺に声をかけてくれてたんだ。実はその時に、バーガンディともう1本あったんだよ。マッチングヘッドの、どちらかというとピンクに近い同じぐらいの年代のストラトが来たんだけど、2本は買えなかった。金ないし。どっちにしようかと思った時に、こっちの色(バーガンディミスト)のほうがレアだったからさ。見たことない色だし。アマチュアの時に最初(指板が)メイプルのストラトを買って、 そのあともフェンダーさんからいろんなものを買ったり借りたりはしてたけども、久々にいいものに会ったなっていう。音はあんまり関係ないけどさ、色が見たことないなっていう。名前がわからないから、パープルって読んでた。ただ、最初は日本の気候に合わなくて、1年以上放置しといたんだよ。来てすぐは良かったんだけど、どんどん鳴りが変わってきちゃって。リペアするよりかは放っておいて、こっちの気候に慣らしたほうがいいんじゃないかって思ってさ。そしたら自分で立ち直ってきた。

―  やはり色を気に入ったんですね。

Char   色だけだよ。色だけで買ったの。金があれば両方買ったけど。

―  しばらく寝かせておいて使い始めたのはいつ頃ですか?

Char   84年ぐらいから使い出して、レコーディングでいろんな音を試して、独特な音がするなと思った。いい音になったのはだいたい85年ぐらいに俺がひと夏イギリスに行って、帰ってきた頃。当時、人のプロデュースばっかりやってたんで自分のこと始めようと思って、スタジオでエンジニアとセルフレコーディングみたいなのを始めた時に、そういえばアレあったなと。使ったら音がすごく太くなってて。あのへんから、いいなこれって。落ち着いたなって思った。

―  その独特の音とはどういう感じですか?

Char   こいつにしかない音っていうかね。いい意味で枯れてるし。音を言葉で表現するのは難しいけど、とにかくほかのストラトでは絶対に出ない音。ほかのストラトもいっぱい持ってるけど、まったく違う楽器なんだよ。

―  その後、PINK CLOUDではそれがメインになっていきますよね。

Char   そのうちね。もうMustangに戻れなくなっちゃったっていうか。それで作曲してそれでレコーディングしてると、特にJL&C(JOHNNY, LOUIS & CHAR)みたいなトリオだと、そのギターで作った楽曲はそのギターでやったほうがいろんな意味で再現できるしニュアンスが出るしね。俺の手に合ってる、ネックの大きさがね。Mustangなら(指板を)見ないでどこでもいけるけど、ストラトはそんなに弾いてなかったから、それがだんだん自分に収まってくるような感じがして。それはネックの形状が一番かな。ストラトっていろんな太さがあるじゃん。嘘みたいにぶっといのがあったりするし。あの子はけっこうシュッとしてて、美人さんていうんですかね(笑)。八頭身で。

―  「Drive Me Nuts」でバーガンディをよく弾いていた印象があります。あの曲はあのギターで作りましたか?

Char   あのアルバム(「INDEX」)はほとんどそうだね。「ALL AROUND ME」もあれだと思う。


いろんな曲を表現しなきゃならないわけだけど、あの子だとOK
 

―  バーガンディを使って録音した曲で思い入れが強いのは?

Char   死ぬほどいっぱいあるよ。一番印象的なのは「FREEDOM」のチャカチャカ弾いてる音。ジミヘンみたいな曲なんだけど、歪んでなくてすっごくいい音がしてる。Mustangでは絶対に出ない。6弦全部鳴らしてコードになるっていうか。俺の場合、クリーンでも歪んでるからさ。

―  これぞストラトの音、みたいな。

Char   俺にとってはね。ある程度年をとってから、ヘンドリックスのバラードの良さに気が付いてさ。すごくいい音じゃん。ストラトってこういう音が出るんだ、みたいな。いい楽器は歪ませなくても指でサステインがすごくかかるんだよ。それが新しい境地というかね。Mustangやギブソンでやってたのとは違うフレージングが、ジミヘンの影響もあって出るようになって。アンプ選ばないしね、あいつ。ま、俺がそうだから、関係ないけどね(笑)。

―  その後、しばらく使わない時期がありましたけど、TRADROCKでは久々に引っ張り出してきて、特に「JIMI」では使ってましたよね。

Char   全部あれ。ジミヘンと言えばストラトだし、一発録りだから、ここはひとつあのストラトを弾きこなしてみようかなと。

―  TRADROCK以降、ライヴでも頻繁に使うようになりましたよね。メインギターと言っていいぐらいです。

Char   マッチレスとの相性がわかってきたっていうかね。TRADROCKもそうだし、デビューした時から、JL&CだったりPINK CLOUDだったり自分のソロだったりPSYCHEDELIXだったり、いろんな曲を表現しなきゃならないわけだけど、あの子だとOKっていうか。「Smoky」以外はね。オールマイティにどこも表現できるかな。間違いがないと言えば間違いがない。チューニング狂わないし。

―  そのバーガンディのプロトタイプが出来上がってきたそうですが、手にしてみた感想は?

Char   とりあえずチームで作ったやつ(CUSTOM BUILT)をこないだ初めて触って、傷の再現はともあれよくこの色を出せたなと思った。それが一番心配だったの。さすがはカスタムショップだね。だって、当時のサンプルなんかもうないでしょ。だからいろいろ混ぜて出すんだと思うんだよ。俺が色にこだわってるのを知ってたのかな、塗装の人が。で、クローンではないから、どれだけ傷つけたって材質の部分とかいろんな部分で新品は新品。それは使っていかなきゃわかんない。まだアンプに突っ込んでないんで。

―  サウンドとか弾き心地とかその辺は?

Char   生の弾き心地はあるけども、どんだけ同じように作ってもそれはそういうわけにはいかないと思うんだ。それはどのギターでも、チームビルドであろうと(マスタービルダーの)ポール(・ウォーラー)が作ろうと個体差が出てくるのは当たり前のことだから、そこに俺は別に興味はない。逆にこれで新しい、もともとのものにはない音が出てくれればいいと思ってるぐらい。同じ音が出たら面白くないじゃん。

―  じゃあ、手にしてくれる人にはそういう新しい音を作っていってほしい?

Char   もちろんそうだよ。それはだってその人の個性だし。もう限りなく(オリジナルに)近いと思うんだよ。だけど、その近い中の違いが面白いんじゃないかな。

―  ネックの握りは完璧に近いんですか?

Char   ちょっと違う。フレットが若い。金物の部分が特に若いっていうか。ポールが製作中のも(MASTERBUILT)早く触ってみたいね。

› 後編に続く


Char

CHAR’S ‘59 STRATOCASTER BURGUNDY JOURNYMAN RELIC
Charが使い始めた当時の外見をイメージして作られるソフトなレリック。程よい使用感が魅力だ。アルダーボディ、メイプルネック、ローズウッド指板、21フレットといった基本仕様で、ピックアップはポールウォーラーのデザインによるもの。

PROFILE


Char(チャー)
55年6月16日東京生まれ。本名・竹中尚人(たけなか ひさと)。8歳でギターをはじめ、10代からバックギタリストのキャリアを重ねる。76年、シングル「Navy Blue」でデビュー以降、「Smoky」「気絶するほど悩ましい」「闘牛士」等を発表。JOHNNY, LOUIS & CHAR結成翌年、79年に日比谷野外大音楽堂にてフリーコンサート「Free Spirit」を行う。

88年、江戸屋設立以降、ソロと並行してPhychedelix、BAHOでの活動を行う。2009年にはWEBを主体としたインディペンデントレーベル「ZICCA RECORDS」を設立し、自身が影響を受けたギタリスト(エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ベンチャーズ、ジミ・ヘンドリックス等)のカヴァーであるTRADROCKシリーズ(DVD/CD)全7タイトルを発表。

2015年5月、十二支のアーティストによる書き下ろしアニヴァーサリーアルバム「ROCK+」を発表 (子:泉谷しげる、丑:佐橋佳幸、寅:布袋寅泰、卯:ムッシュかまやつ、辰:石田長生、巳:奥田民生、午:松任谷由実、未:佐藤タイジ、申:JESSE、酉:福山雅治、戌:宮藤官九郎、亥:山崎まさよし)。6月15日、生れ還る暦を迎える前夜に、13組のアルバム参加アーティストをシークレットゲストに迎え、日本武道館公演を開催。7月、日比谷野外大音楽堂にて、フリーコンサート「Rock Free」を開催。11月には、武道館公演を完全収録した「ROCK十 EVE -Live at Nippon Budokan-」(Blu-ray/DVD+CD)を発表。

2016年、デビュー40年を記念した全国28カ所のツアー「1976+40」を敢行。2017年には、ZICCA創設以来初となる、WEBコンテンツを主体としたOfficial “Fun”club「ZICCA ICCA」を開設。また、ギターマガジン誌による、プロギタリストを中心とした音楽関係者へのアンケート投票「ニッポンの偉大なギタリスト100」にて、1位に選ばれる。年末にかけて、自身初となるアコースティックツアーを開催。

› Website: http://top.zicca.net/