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Why We Play vol.10:KIRINJI 弓木英梨乃 インタビュー【後編】
KIRINJIのギタリストとしてだけではなく、秦基博、土岐麻子、柴咲コウといった多くのアーティストのサポートギタリストとして活躍する弓木英梨乃。後編では彼女が愛用するフェンダーギターの魅力などについて聞いた。
それが一番の財産だなって思うんです
― 弓木さんが使っているフェンダーのギターについて聞かせてください。
弓木英梨乃(以下:弓木) 最近メインで使っているのがジェフ・ベックモデルです。このギターは、17歳の誕生日に父が突然プレゼントしてくれた思い出のギターなんです。。
― おねだりしたわけではなく(笑)?
弓木 違うんです。突然父から送られてきたんです。父とはジェフ・ベックのライヴに行ったし、私もよく聴いていたんですけど、まさかこのギターをプレゼントされるとは思ってなかったです。でも一時、ハムバッカーのギターが好きで、このギターは弾いていなかったのですが、この何年かはメインで使っていて私の中で再び熱が上がってきています。
― ハムバッカーからシングルコイルのジェフ・ベックモデルに変わったきっかけは?
弓木 いろんなところでギターを弾く中で、フェンダーのシングルコイルの音はどの現場に行ってもみんなが求める音なんですよね。確か最初は、ライヴで“シングルコイルのギターを使ってほしい”というリクエストがあって使い始めたと思います。で、ギターって弾けば弾くほどこんなに変わるんだ!っていうくらい弾きやすさとか音が変わってくるんです。それでシングルコイルに関しては、食わず嫌いじゃないですけど、弾いてなかっただけなんだなって気づきましたね。
― ジェフ・ベックモデル以外にも赤のStratocasterも弾いていますよね?
弓木 赤のストラトも父にもらったんです(笑)。私が東京で暮らすようになって突然送ってきたので、意図もわからないです(笑)。でもすごく活躍していて、秦基博さんの5月の横浜スタジアムのライヴはこの赤のストラト1本でやりました。
― 弓木さんはヴァイオリンも弾くわけですが、いろんな楽器がある中でギターにしかない魅力って何だと思いますか?
弓木 他の楽器と違うのは、いろんなことが許容される楽器だなって思えることです。例えば他の楽器が演奏中に失敗をしたとすると、いわゆる“失敗”にしか聴こえないような気がするんです。でも、ギターが何かのアクシデントで予想していなかった失敗をしてしまったとしても、それはそれで成立するというか、それさえもカッコいいとされる楽器だなって思うんです。楽器にはそれぞれの良さがもちろんあって、楽器を演奏する楽しさは共通のものだと思うんですけど、ライヴをやっていて思うのはそういうところです。いわゆる上手い下手といったテクニックじゃないところの魅力が大きい楽器ですよね。上手くなくてもすごくカッコいいと思える人もいるし。
― 許容や自由さは確かにギターならではの魅力ですよね。
弓木 と、自分に言い聞かせて甘えているだけなんですけどね(笑)。
― ご謙遜ですね。現在、弓木さんは28歳ですからこれから今までの倍以上のキャリアを積んで行かれると思いますが、こういうギタリストになりたいといった理想像はありますか?
弓木 ギターをやっていて一番良かったなって思うのは、本当にたくさんの人に出会えたことだし、それが一番の財産だなって思うんです。だから、今は好きな人と演奏したいからギターを頑張って練習している部分が一番大きいんです。で、この歳になってようやく先のことを初めて考えるようになったんです。それまでは必死に目の前のこと、この1年、数カ月ってところしか考えていなかったのが、漠然と自分は一生ギターをやっていくんだろうなとか、一生音楽をやっていくんだろうなっていう思いに変わってきたんです。じゃあ50歳、60歳、70歳になった時にどうなっていたいかを考えた時、やっぱり好きな人とずっと演奏していたいって思ったんです。小さいライヴハウスでビールを飲みながら演奏するのも夢だし、ずっとステージに立ち続けたいことも夢だし。じゃあそこに向けてどうすればいい?となった時に、ギターを使って自分らしい曲を書いてみようとか、書いた曲の中で自分のスタイルを確立させていこうとか、“弓木さんと言えばこういう曲で、こういうプレイをしているイメージがあるよね”っていうものを、もうちょっと作っていきたいと思っていますね。
― その素敵な夢を愛用のフェンダーのギターとともに叶えていただきたいと思いますが、弓木さんにとってフェンダーの魅力って何だと思いますか?
弓木 フェンダーの魅力は、フェンダーにしか出せない音がするところです。曲を演奏する時に、まず“フェンダーのストラトの音が必要だな”って思うことがたくさんあるんです。しかも、ギターのことがわからない人や、音楽を純粋に聴くのが好きな人も、フェンダーの音を求めていることに気づきました。フェンダーのストラトのことも、テレキャスのことも知らない人でも、自然と頭の中で求めているフェンダーの音が鳴る…それがフェンダーだと思います。
― そして、今回は新しくフェンダーのAmerican Original ‘60s Jaguarも弾いてくださるのですが、なぜJaguarを選んだのですか?
弓木 まず、見た目が好きっていうのがありました。フェンダーのギターの色ってめちゃめちゃかわいいんですよ。この昔の色が大好きなんです。プレイ面で言うと、私はずっと女性向けのギターセミナーをやっていて、女性がもっとギターを弾いてみたいと思ってくれる存在になれたらいいなと思っているんです。例えば自分の好きなアーティストのライヴを観に行った時、バックで自分と同じくらいの年齢の女性がギターを弾いていたとしたら、“憧れのアーティストのバックでギターを弾く”という仕事を目指す女性が出てこないかなと思っていて。女性ということを考えると、自分自身も手が小さいし握力もないし、男性に比べるとハンディキャップがあると思うんです。だから私も、ギターを弾く時にいろいろな工夫をしています。例えばすごく細い弦を張ったり。その中でも、Jaguarのようにショートスケールで弾けるのは女性にとってすごく大きなことだし、女性がギターを選ぶ時にそういうことを考えてあげることは、すごく大事なことかなって私は思うんですよね。
― 確かに、弓木さんの手は小さいですね。
弓木 私、手はめっちゃ小さいんですよ。そう言えば、ギタリストのオリアンティが雑誌のインタヴューで“私はすごく細い弦を張っているわ。ギターって難しいから簡単にして弾かなきゃ”って言っていて、“あっ!こんな太い弦を張る必要ないんだ”と思って細い弦に変えたんです。だからみんな無理をしないで、どんどんラクをしてギターを弾くべきだと思いますね。
― では最後に女性も含めて、今からギターを始める人やビギナーにアドバイスをお願いします。
弓木 ギターって簡単ではないです。だからきっと続けられず辞めちゃう人も多いんだろうけど、もっと気楽に長く続けたらいいのになと私は思っていて。例えば1日1分でもいいから、ドラマを観ていてコマーシャルの間だけ手を動かすとか。そういう風に、気楽に長く付き合っていけるものとしてみんなが捉えたらいいなって思います。
› 前編はこちら
弓木が所有するフェンダーコレクション
Jeff Beck Stratocaster® Olympic White
17歳の誕生日に父親からプレゼントされた1本。最近はメインギターとして活躍している。
American Special Stratocaster® Candy Apple Red
こちらも父親からプレゼントされたモデル。ライヴでの使用頻度も高く、5月に横浜スタジアムにて行われた秦基博のライヴはこの1本でこなした。
› American Special Stratocaster®製品ページ
American Original '60s Jaguar® Surf Green
見た目がお気に入りだという本機。ピックアップはPure Vintage ‘62 Jaguarで、エナメルコーティングされたコイルワイヤーからクロスカバー出力ワイヤー、ファイバーボビン、アルニコ5マグネットに至るまで、当時のスペックを忠実に再現している。
› American Original '60s Jaguar®製品ページ
PROFILE
弓木英梨乃
1990年、大阪生まれ。2歳半からヴァイオリンを始め、音楽のキャリアをスタートさせる。中学1年の時にザ・ビートルズの「Ob-La-Di, Ob-La-Da」を聴いて衝撃を受け、ビートルズを聴きまくり、父親のギターを借りてひたすら楽曲を完全コピーする日々を送る。中学3年生の頃から父親にプレゼントされたMTRでオリジナル楽曲の制作を始め、音楽的才能を開花させてゆく。同時にスティーヴ・ヴァイやスティーヴィー・レイ・ヴォーンにも憧れ、ギターインストも作り始める。2009年、シンガーソングライターとしてメジャーデビュー。年齢とルックスからはギャップさえ感じさせる、テクニカルかつ、時に激しいギタープレイでも注目を浴びる。2012年よりライヴサポートやレコーディング、ギタリストをメインに活動を始める。2013年夏より、6人編成となった新生KIRINJIの正式メンバーとなる。個人としてもシンガーやアイドルへの楽曲提供、アレンジ制作を行うなど、その活動の幅をさらに広げている。
› Website:https://natural-llc.com/kirinji
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