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Hump Back 「髪はしばらく切らないツアー」レポート
大阪出身の3ピースロックバンドHump Backが、5月12日(日)日比谷野外音楽堂にて全国ツアー「髪はしばらく切らないツアー」のセミファイナルを開催。その模様をレポート。
同公演は、昨年12月にリリースしたシングル「涙のゆくえ」を引っさげてのツアー「髪はしばらく切らないツアー」のセミファイナル。少し肌寒さの残る野音には、20代の男女を中心にたくさんのオーディエンスが集まった。
「神様なんていないぜ、ライヴハウスを信じてここまで来たんだ!」
American Performer Telecaster HUMを抱えた林萌々子(Vo,Gt)がそう力強く叫び、まずは1stシングル「拝啓、少年よ」からスタート。カッティングとともに彼女が歌い出すと、客席からは歓声が上がり、それをかき消すかのように、ぴか(Ba,Cho)、美咲(Dr,Cho)のリズム隊が一斉に鳴り出した。たった3人とは思えないような、まるで音の塊のような爆音に驚いていると、間髪入れずに「高速道路にて」へ。ジャキジャキとかき鳴らされるテレキャスは、クランチ気味の歪みがかかっているが、弦の1本1本まではっきりと聴き取れるほど粒立ちが良い。それでいて中音域の“芯の部分”もしっかりと存在しており、3人だけのアンサンブルでも物足りなさなど一切感じさせない。ぴかは小柄な体でピョンピョンと跳ねたかと思えば、脚を大きく開いてヘッドバンキングをするなど、派手なアクションを繰り広げつつもしっかりとボトムを支えている。
「バンド、めっちゃ楽しいです。最高! みんなもやればいいのに!」
笑顔でそう言った後は、裏打ちのギターカッティングと太い4つ打ちキックが印象的なカントリーソング「のらりくらり」を披露。宙を切り裂くような音色は、テレキャスの真骨頂と言えよう。続く「ボーイズ・ドント・クライ」では、ファルセットのハーモニーが少し暗くなってきた野音の空へと溶けていった。
前半のハイライトは“10代の時に書いた曲です”という紹介のあとに演奏した「うたいたいこと」。林がギター1本で“間”をたっぷりと取りながら切々と歌い出すと、客席が波を打ったように静まり返る。シャウトとウィスパーを巧みに使い分けながら、聴き手の琴線を激しく揺さぶる。さらに、3拍子と4拍子を組み合わせたトリッキーな曲調の「サーカス」、イントロが鳴り始めた瞬間どよめくような歓声が上がった「チープマンデー」と畳み掛け、ベースソロからギターソロへとバトンタッチする間奏で、会場のボルテージは最初のピークを迎えた。
「陽が落ちてきたけど、大丈夫? 寒くない? 風邪だけは引かないように!」
MCのたびに、何度もそう話しかける林。確かに、Tシャツ1枚だと体が冷え切ってしまいそうだ。そんなオーディエンスを温めるように、熱くほとばしるようなパフォーマンスを繰り広げる3人。“昔付き合っていた人から連絡があって。『街中からお前の歌が聴こえてくるんだが、これは何かの呪いか?』だって”と、最近あったエピソードを披露し笑いを取る林。気さくなキャラクターと、鉄壁のアンサンブル、エモーショナルな楽曲とのギャップもまた彼女たちの魅力のひとつだ。
「世の中を変えるのは人、人を変えるのはロックバンド。私たちロックバンドが世の中を変えてみせる!」
そんなエモい言葉を吐き出しながら演奏した「短編小説」、映画『真っ赤な星』の主題歌に起用された「クジラ」を演奏したあと、“愛と尊敬を込めて”と言いながらチャットモンチー「湯気」のカヴァーを披露した。
その後も“まだ演奏するのは2回目くらい”という、出来立てホヤホヤの新曲「僕らは今日も車の中」や、フォークミュージック調のメロディがノスタルジックな「ナイトシアター」、ソウルフルな「悲しみのそばに」などを矢継ぎ早に繰り出していく。楽器数が少ないぶん、カウンターメロディのようなフレーズでアンサンブルを彩るぴかのベースと、それを引き立たせるようにあくまでもシンプルなフレーズに徹する美咲。2人の息の合ったコンビネーションにも胸が熱くなる。
新曲「LILLY」、オーディエンス全員で拳を上げた「今日が終わってく」、そして野音にシンガロングがこだました「星丘公園」で本編は終了。アンコールは「嫌になる」を演奏し、鳴り止まぬ拍手の中、まさかのダブルアンコールで「LILLY」を再び演奏してこの日の公演は幕を閉じた。
“またライヴハウスで会いましょう”とライヴ中に何度も呼びかけていた林。そう言えば今日のステージも、まるで小さなライヴハウスのようにアンプやドラムセットを中央に寄せ合って演奏していた。どんなに大きなステージに立とうとも、“自分たちはライヴハウスのバンドだ”という気持ちを捨てない、そんな矜持を感じさせる一夜だった。
(Photo by 知衿)
セットリスト
01.拝啓、少年よ
02.高速道路にて
03.ヒーロー
04.のらりくらり
05.ボーイズ・ドント・クライ
06.VANS
07.うたいたいこと
08.サーカス
09.チープマンデー
10.生きて行く
11.短編小説
12.クジラ
13.湯気
14.いつか
15.僕らは今日も車の中
16.ナイトシアター
17.悲しみのそばに
18.月まで
19.LILLY
20.今日が終わってく
21.星丘公園
ENCORE
嫌になる
DOUBLE ENCORE
LILLY
› Hump Back: http://www.humpbackofficial.com/